「感動」は、一人ひとりの心の中にあって引き出されるものではありません。
人と人との「間」に生まれてくるものです。
そうして育って行くのが「人間性」であり、言わば、ヒトから人間へと育って行く過程で周りにどんな大人達がいたか、どんなこと(もの)にふれて育ったか、ということが、その子のその後の人生を決定づけると私は思っています。
そういう意味では、昔からの言い伝え「ミツ児の魂百まで」通り早くから、優れた文化・芸術に触れていること、とりわけ幼児の心を耕す「絵本」の価値は大きいと思います。
勧善懲悪やハッピーエンドの物語ではなく、また、「楽しい」「嫌な気持ち」だけでなく、「辛い」「悲しい」「淋しい」「悔しい」「それは間違っている、おかしい!」等々、人としての様ざまな感情を誘う言葉・絵・内容によって、共感、恐怖、不安、安堵、葛藤、醜さ、酷さ、惨めさ、優しさ、弱者を思う正義感、等々、人間性を育てることに通じる感情移入の体験や共感の体験が大切で、それは、子育てや・教育の原点ではないかと思います。
子ども達が絵本を読まなくなったのは、その子の親や周囲の大人達のせいです。
自分たちがいろいろな意味で楽をするために、テレビやゲームに子守をさせていたからです。
テレビをあまり見ない家庭で育った子は、幼児から絵本をよく読みます。
親・先生の読み聞かせや、図書館へ行く楽しみも知っています。
絵や言葉が同様の絵本(文と絵)と、テレビでは、言葉やセリフが、全く同じ場面、同じ物語、同じ展開においても子どもの心の育ち行きは大きく違ってきます。
テレビでは画面から一方的に一定のテンポで押し寄せてきては次つぎと場面が変わります。
子どもの心に届く前に、響く前に、次の場面に進んでしまいます。
つまり「聞き流す習慣」がついてしまい、「感じる」「こだわる」「考える」「想像する」「共感する」といった、瞬時・瞬間、自分のペースで進んでは「立ち止まる」という経験が得られないから「心」が育たないのです。
ピアノに限らず音楽は、音で何かを表現することです。
表現したいもの・するべきものがあってこそ、その媒体となる音の出し方や技術を学ぶ価値があるのです。
心が育っていなければ本当のレッスンはできません。
そのためにも「感性」を養う絵本は大切です。
感性と表現力はリバーシブルですから。
以下は、読ませて欲しいおすすめの絵本です。
「うみがみえるきこえるよ」エリック・カール=作・絵、もりひさし=訳、偕成社
「スーホの白い馬」モンゴル民話/大塚勇三=再話、赤羽末吉=絵、福音館書店
「アフリカの音」日本絵本賞/厚生省中央児童福祉審議会推薦文化財、沢田としき=絵・作
「セロ弾きのゴーシュ」
「やさしいピアノ絵本 ピーターと狼」
「ピアノ絵本館⑦マザー・グース」
「おこんじょうるり」
「オノマトペの絵本」
「アバドのたのしい音楽会」
私は、幼少期は体が非常に弱く外で遊ぶことがあまりできなかったこともあり、たくさんの絵本を読んで育ちました。