音楽の価値とか効果とはいったい何なのか?
音楽に浸っている瞬間の恍惚とした感情、共鳴、心からの感動、そして身体中に満ち溢れる充実感、音楽の過ぎ去った後の充足した不思議に精神の高揚された状態、陶酔感などを、思い浮かべることが出来ると思います。
音楽のもたらすものは、私たちにとって安らぎであり、慰めであり、救いであり、そして喜びであり、楽しみです。
音楽は人間の感受性に働きかけ、その心の奥にまで浸透し、心情を揺さぶり、感情の世界を支配してしまうのです。
音楽を初めとして絵画、彫刻、演劇、舞踊、文学などが芸術と呼ばれているのはご存知のとおりですが、芸術とは、フレーベルの言葉を借りるならば、人間の内容的生命の躍動、心情の表現であり、人間が生まれながらにして持つ本質的な素質であり、財産です。
さらに芸術とは、そのような人間相互の本質的要素に裏付けられて、個々の人間が互いに感情を交流しあうことのできる唯一の手段でもあります。
“芸術は感情を伝える言葉である”といわれるゆえんですが、このように芸術はしばしば言語と比較されることがあります。
言語によって人間は、自分以外の人々の経験や思索により知り得たことをすべて知ることができ、また自らの思想を他に伝えることができます。
そして、芸術によって人間は、自分以外の人々の経験した感情をすべて理解することができ、また自らの感情を他に伝えることができるのです。
つまり、言語と芸術は揃って人間が相互に交流を行うことができる二つの能力、思想と感情を媒介する重要な役割を果たすものですが、このような交流手段を持つことこそ人類の最も優れた特色と言えるのであり、人間の幸福と進歩のためには常に高められていかなければならないものということが言えます。
人間にとって重要な交流手段の一つである芸術が、単なる贅沢品や快楽、気晴らしや慰みである筈はありません。
芸術は人間の幸福な生活を築く為に欠かすことができないものなのです。
数ある芸術の中でも、音楽は最も精神性の高い芸術といわれています。
音楽は他の芸術と異なり、目に見えず、直接手に触れて確かめることができません。
「時間の芸術」ともいわれるようになり、音が鳴り響いているその一瞬が過ぎ去ってしまえば、いっさいが惜しげもなく消えてしまうもっとも具象性に乏しい芸術です。
しかしそれだけに、いっそう人間の心に与える印象は純粋であるといえましょう。
「あらゆる芸術は音楽を指向する」という言葉がありますが、音楽は誰に対してもむぞうさにその内ぶところに飛び込み、その心をゆり動かします。
それは言語などの遠く及ぶところではありません。
言語は、それを理解しない人々の間では何の役にも立ちませんが、音楽は国境を越え、文化の発達や教養の如何にかかわらず、人々の間に何らかの共通な感情の交流を呼び起こさずにはおかないのです。
これが音楽の効果であり価値です。
音楽からよい影響を受けるには、受け入れる側もそれだけの準備をしておくに越したことはありません。
即ち、音楽が人々の間に好ましい精神的交流をもたらすものとなるかどうかを判断し、批判してよりよい音楽を受け入れる、そのような音楽的教養を培うことが、人間の生活を豊かにし、高めるもととなり、ひいては円満な人格の完成に欠くべからず条件になってくるわけです。
その為には、適切な時期に音楽に対する教育を施す必要があります。
その時期は、精神がもっとも柔軟な時期、つまり幼児期から青年期を通じてがもっとも最適です。
そしてこの音楽に対する正しい理解力や批判力を養う為に一番よい方法が、演奏を実際に経験し、音楽を自らの手で創り出すことです。
ピアノの学習はその中の一つです。
ピアノを習う利点は、
①入門が比較的容易であり、音に対する理解が容易で早いです。
②音楽を学ぶのに便利です。
③応用範囲が広い。独奏、伴奏、合奏のほか、オーケストラ代わりにも使えるし、あらゆる楽器のパートの代用もできます。
ピアノを学ぶことは、音楽を学ぶための基礎として、非常に重要視されており、音楽学校ではピアノ科以外の学生も副科としてピアノを必ず学ばなければならないことに定められているほどです。
ピアノを学ぶということは、音楽を学ぶということです。
音楽を学ぶということは、音楽をよりよく、より深く理解すること、楽譜を読むことを知り、音の美しさを感じ取り、弾く楽しみがわかり、音楽の良し悪しを判断し、音楽について語る喜びを持つこと、そして高い芸術の世界を理解することにより、人格に豊かな感受性と高尚さを少しでも加え、さらに豊かな交流をお互いの生活にもたらすこと、人生をより豊かにするため、
ピアノを学ぶ真の目的とはこのようなものではないでしょうか。
長い文章をお読み頂きまして有難うございました。
結城美帆子ピアノ教室では、体験レッスンを行っております。
入会は自由ですので、お気軽にお越しください。