個人的なこと。結城美帆子

人間が生きていくためには、食べていかなければなりませんので、まずはお箸で食べられるようにしましょう。

お箸で食べられるようになってから、鉛筆の持ち方を教えましょう。

お箸は、脳の発達にも良いと言われております。

お母様方の中には「私はお箸の持ち方を教えてもらわなかったので、どう教えて良いかわからない」という方もおりますが、どう教えてもらったか忘れてしまったのでしょうね。

人間は、出来なかったことが出来るようになると、出来なかった時のことを忘れてしまうようですから。

最初からお箸を正しく持てる子供はいないでしょうね。

私は、親から教えられた覚えがあります。

中学3年生の時でしたが、会食があり「綺麗に食べたい・綺麗に食べられるようになりたい」と思って、あらためてお箸の持ち方を勉強しました。

自我の芽生えと共に欲望が生まれますから、本人にとって本人が望むことは得られるようになると思います。

ただ、自閉症スペクトラムなど発達障害のお子さんの場合は、主体がないと言われておりますので、本人が望みを持てるような環境に置くことが大切ではないかと思います。

一般的な成長をしている場合は、みんながお箸で食べているのに、自分だけお箸が使えないで手づかみで食べることしかできない場合、恥ずかしいという感情が湧き、自分もみんなと同じようにお箸で食べられるようになりたいという欲望が湧き、お箸の持ち方を覚えたいと望み、お箸の持ち方を覚えるようになりますが、自閉症スペクトラムなど発達障害の子供は、主体が出てこなければ難しいでしょうね。

比べるのは良くないと言われますが、他者を見て欲望が湧き、出来なかったことが出来るようになったり、覚えられなかったことが覚えられるようになったりすることもあります。

私は、毎日大豆を利き手と反対の左手でお箸で食べておりますが、脳を使うためでもありますが、出来ないことを出来るようにすることがどれだけ大変なことかをたえず実感しているようにするためです。

ピアノを習いにお越しになる方は、出来ないことを出来るようになりたいから、ピアノが弾けるようになりたいからですから、レッスンにお越しになっているわけなので、出来ないことを出来るようになる時の大変さや辛さ自分がたえず実感して生徒さんの気持ちに寄り添うためです。

障害がある方に教える時は、特に考えます。

何かを覚えるということは、大変なことですからね。

出来ないことを出来るようにするという意味では、健常者も障害者も同じなのです。

私だって最初から簡単にピアノが弾けたわけではないです。

初心を忘れないためにも、利き手と反対の手でお箸を持って大豆を食べたり、利き手と反対の手で雑巾かけをしたり、利き手と反対の手で文字を書く練習をしたりして、少しでも生徒の皆さんの気持ちに寄り添ったレッスンが出来るように、日々努力をしております。

先日、大人の生徒さんから「先生は、出来ない人の気持ちはわからないと思いますが」と言われたのですが、ピアノを教え始めた頃から10年間ぐらいは「なぜ、こんなことがわからないのだろう」とか「なぜ、こんなことが出来ないのだろう」と思って教えていたのは事実ですが、10年が過ぎた頃から「出来ないのが普通、出来ないのが当たり前、わからないのが普通、わからないのが当たり前」と思うようになりました。

それからは、教え方の勉強をしました。

どうやって教えたらいいのかわからなくて、音高受験生や音大受験生の指導に逃げていた時期もありました。

音高音大受験生の指導は、やることは同じなので、趣味の方に教えるよりもらくなのです。

音楽大学の偉い教授先生は、初心者や出来ない人を教えた経験なんてありませんから、音楽大学の先生に聞いても答えは得られませんでした。

初心者や導入期を教えられるそれなりの先生っていないのです。

東京芸大や桐朋音楽大学、東京音楽大学、武蔵野音楽大学、国立音楽大学などのピアノ科に合格しているような人たちは、習い始めから専門家を目指している人たちを教えている指導者にレッスンを受けている人がほとんどですから、幼児から毎日数時間の練習は当たり前なので、一般的な人とは違います。

一般的な方を教える場合は、まずはピアノは家で練習が必要であるということから教えなければなりません。

ご用意していただける楽器も、それなりの音楽大学受験を受ける人は習い始める時からグランドピアノを用意しますが、趣味の方の場合は電子ピアノやアップライトピアノが多いですから、ピアノのタッチやテクニックの指導が出来ないのです。

レッスンで脱力やタッチを教えても、電子ピアノやアップライトでは楽器の構造上ハーフタッチが出来ないので家で脱力やタッチの練習は出来ないのです。

ピアノを習う目的も違い、持っている楽器も違っている人たちに、ただ漠然と「ピアノが弾けるようになりたい」「ピアノを弾けるようにさせたい」という人たちに、何をどう教えたらよいのか悩みに悩みました。

結局、電子ピアノでもアップライトでもグランドピアノでも教えられること、ピアノを弾く基本を教えれば良いのではないかという結論に達しました。

ピアノを弾く基本は、まずは楽譜を読むことです。

楽譜を正確に読み、正確に弾くことが、ピアノを弾く基本です。

弾けるようになるにつれ、本人が「速い曲が弾けるようになりたい」とか「あの曲が弾けるようになりたい」とか「コンクールに参加して金賞をとりたい」とか「音楽大学へ行きたい」とか望むようになるので、その時に本人の願いが叶えられるようにレッスンをするようにしております。

楽譜を読むということは。結城美帆子

楽譜を読むということは、ただ音符を読むだけではありません。

楽譜から作曲家の意図や想いを汲み取らなければなりません。

なぜ、poco. ritが書いてあるのか?なぜ、テヌートが書いてあるのか?どんな些細なことでも見逃しては作曲家に失礼です。

楽譜を読むということは、楽譜に書いてある全てを一つも見落とすことなく読み取るということです。

楽譜に書いてある全てを読み取ることができれば、脱力も入力も自然にできますし、表現も自然にできます。

小林秀雄先生の「落葉松」や「日記帳」などは、テンポが頻繁に変わりますが、指示されたテンポで演奏すると『なるほど』と納得した経験があります。

小林秀雄先生は「作曲家は、楽譜に書くことしかできないんだから、楽譜に書いた通りに演奏して欲しいんだよ。」と言われたことがございました。

楽譜や記譜法は進化しておりますから、古い時代の作曲家の曲は記されていないことも多いので想像力も必要ですが、我々が普段使用している楽譜は、編集をされておりますから、編集者が想像をして書き足してるところもあり弾きやすい楽譜になっております。

見落とさないことを習慣にしましょう。