自閉症を知るためにラカンの精神分析を学んでおりますので、自閉症の子どもにピアノのレッスンを行う時は、ラカンの精神分析の観点でレッスンを行っております。
知的レベルがさほど低くなく、行動障害が見受けられない場合には、何の支援を受けずに、一般の学校の一般のクラスで学んでいると思います。
私は、定型発達のお子さんと発達障害のお子さんの両方を指導してきました。
発達障害の子さんの指導は、50名以上になり、これまで学んできた専門的な知識と経験から、私なりに発達障害(自閉症)の特性を把握することができるようになりました。
ある論文で「自閉症者は去勢を免れている」と言うものがあったのですが、昨日のレッスンで「このことか」と思えたことがありました。
自閉スペクトラム症で通級で学ばれている中学2年生の生徒さんです。
お母様が、「バッハコンクールをどこで受けたら良いか相談をしたいので」とレッスン室にお入りになられましたので、お母様がコピーしてくださった会場を見て考えておりましたら、
生徒さん本人が、「僕は相談するって言っていないよ」と言いました。
これまで私がコンクールの指導をさせて頂いた生徒さんたちは、みなさん「どこで受けた方が良いでしょうか?」と聞いてきましたので、時にはW先生にご相談をさせて頂きながら受ける会場をアドバイスしてきたのですが、「どこで受けたら良いでしょうか?」と相談してくる心理は、予選を通過したということではないかと思うのですが、「僕は相談するって言っていないよ」と言った生徒さんの心理は、「自分は予選を通過できる自信があるから何も先生に相談する必要はない」と想像できます。
自閉症の子は、去勢を免れているので、「自分は出来る」と万能感を持っているのです。
別な論文には、自閉症者の『倒錯』というものがあり、自閉症者が何らかの問題が生じた時に用いる手段の方法として、拒絶と否認があるとのことです。
ピティナピアノコンペティションに参加して自分で思っていた結果が出なかった場合、一般的な俗に言う定型発達の生徒さんは、親御さんから話を聞くと、帰りの車の中で泣きじゃくったと仰いますが、自閉症の生徒さんは感情的にはならないようです。
良く言えば、自閉症の子はポジティブです。
一般的な子は、自分が思った結果が出なかったら、すぐに気持ちを切り替えて1年間の具体的な目標を立て計画を立て、1年後の目標達成に向けて努力をするのですが、自閉症の子は、否認と拒絶なので、終わったらそこまでで反省は無いようです。
自閉症の子は、子どものうちに去勢を経験させ(象徴的なですよ)、万能感を捨て折り合いをつける経験をさせてあげたほうが良いと思っています。
簡単に申し上げると、失敗の経験をさせるのです。
経験をさせただけで終わってしまってはいけません。
なぜ失敗したかを考えさせ、どうしたら成功したかを考えさせることが、自閉症でも自立して生きていける力を養うことにつながります。
失敗をきちんと失敗と自覚できるようにしてあげることです。
自閉症の子は、心理的に、失敗を拒絶・否認してしまうので、失敗が次への糧にならないのです。
かと言って、一人で乗り越えるだけの精神的な強さはありませんから、親や指導者のフォローが必要です。
発達障害・自閉症と診断を受けていない子どもの中にも俗に言うグレーゾーンの子はいます。
私の教室にも、専門医の診断を受けてはいないけれど、発達障害・自閉症の特性がある生徒さんがおります。
子どもの失敗を恐れないようにしましょう。
失敗しても子どものうちだったらいくらでもフォローが出来ますから大丈夫です。
社会に出て初めて失敗の経験をしたら誰もフォローしてくれませんから、下手をすると反社会的な行動で解決を試みたりした結果、自分の命を落としたり、自由を拘束されるようなことにもなりかねません。
一対一で行われるピアノのレッスンとは、指導者との関係の中で色々な経験を通して生きていくための方法を身につけ生きていく力を養うことと思っています。
合唱の伴奏をする予定の中学生の生徒さんがおりまして、譜読みもできていないようだったので追加レッスンをしてあげようと思って、本人と親御さんに相談にお越し頂いて、あと3日で弾けるようにするには、〇〇さんの場合は最低でも〇〇時間は必要というお話をして、一人で練習するのは難しいと思うから、一緒に練習というレッスンを提案したのですが、本人が「一回追加レッスンをお願いします」と言われたので、「今回の追加レッスンの目的は最後まできちんと弾けるようにすることなので、一回だけは引き受けられない」と申し上げましたら、「追加レッスンは受けずに自分で練習します」と本人が結論を出しましたので、追加レッスンはしないことになりました。
「自分は出来る」と思っているのでしょうね。
この生徒さんは、基本的なペダルのレッスンをまだ行っていないので、伴奏を一人で仕上げるのは難しいと申しますか、ペダルの入れ方が出来ないので、自己流でペダルを踏めば濁って汚くなってしまうと思うので、レッスンが必要なのですが、本人の意思を尊重したいと思います。
本人が、心からフォローを求めてきた時には迎え入れようと思っています。
あとは、学校の先生のこの生徒さんに対してのフォローがどこまで出来るかで、この生徒さんがこの経験を生きていく上での糧にできるかどうかが分かれると思います。
大人の対応が悪いと、経験からですが、いじめのもとにもなり得ます。
子どものいじめには、必ず原因があります。
子どもが精神的な経験をする時、大人のフォローが大切なのです。
子どもは心のサインを出しています。
大人は、子どもの無意識のSOSのサインを見逃さないようにしましょう。
そうすれば、子どもの自殺は防ぐことができます。
最後までお読み頂き有難うございました。
全ての子どもが大人になれますように!