脱力について。結城美帆子

ピアノを弾く上で、脱力はとても大切です。良い音を出すためには、脱力が必要ですし、脱力ができるためには、良い手のホームが必要です。

悪い癖をつけないようにと、ピアノを弾き始める前に、脱力や手のホームを教え込む指導も有りますが、ある程度弾けるようにならないと、脱力の意味もわからないと思いますし、力を抜くと言うこと自体わからないのではないかと思います。

当教室では、まずはピアノを弾くことを楽しんで頂きたいと思っておりますので、最初は、あまりうるさいことを言わないで、自由に弾かせるようにしております。

ピアノは、時代とともに変化もします。私が習い始めた頃は、ハイフィンガータッチと言われております指を高く上げて垂直に指を落とすと言う弾き方でした。

ハイフィンガータッチは、フンメルポジションと言われます。

昔のピアノは、タッチが重かったようで、指に重さをかけないと音を響すことができなかったので、指に重さをかけるために、指を高く上げて垂直に指を落とすことにより音を出していたようですが、ショパンの頃には、鍵盤が軽くなっていたようで、指を高く上げて弾くのではなく、ショパンポジションになったようですが、日本の偉いピアノの先生方は、フンメルポジションを採用したようで、いまだに指を高く上げて弾く弾き方を教えているピアノの先生もいるようです。

なぜ、ヨーロッパではショパンポジションが主流になっていたにもかかわらず、日本ではフンメルポジションだったのかと言うと、私の想像ですが、日本にピアノが入ってきた明治時代は、芸大の学生でさえオルガンで練習をしていたようですから、オルガンタッチだったのではないかと思います。

音楽高校に通っていた頃、着物を着てオルガンでレッスンを受けている女性の写真を見たことがありました。

ドイツ人の男の先生が、女性の横で竹刀を持って教えている様子でした。

最初は、楽しいなんてもんじゃなかったと思います。

国の命令でドイツ人からピアノのレッスンを受けたわけですから大変だったと思います。

ピアノは、テコの原理で音を出すので、指の重さで弾くのですが、オルガンは、指の重さは関係なく押して音を出しますから、ピアノとオルガンは、同じ鍵盤楽器ではありますが、楽器の構造上弾き方が違うのです。

同じ鍵盤楽器のシンセサイザーなどは、音を強くする時は、鍵盤を強く押し込んで弾き、弱い音を出す時は、鍵盤を軽く押して弾きますので、いつもグランドピアノを弾いている私にとっては、シンセサイザーを弾くのはすごく難しくて弾けないのです。

老人ホームや障害者施設などで音楽療法を行っているのですが、ピアノではなく、シンセサイザーを置いてある施設が多いので、けっこう大変なのです。

シンセサイザーや電子ピアノを弾くと、あちこちに力が入ってしまうためか、手が疲れるのです。良いピアノほど鍵盤の戻りが速いので弾きやすいのです。

良いピアノほど、手に負担がかからず楽に弾けるのです。

私が習い始めた頃は、親指でさえ上げてと言われましたが、今は、どの指も45度で弾くのが良いと言われております。

ソフトボールを持つような感じです。

そうすると、自然に脱力もできるようです。

子供は、もう少し小さいボールが良いと思います。

子供の手にあった大きさのボールを粘土で作るのも良いと思います。

今のピアノは、グランドピアノですけど、鍵盤の戻りが速くなってますから、軽く感じられますし、指を高く上げて振り落さなくてもフォルテも十分に出せます。