私が介護の仕事をやめた理由は。結城美帆子

私が介護の仕事を続けられなかった理由の一つは、人が死んで行くことが当たり前になり、人が死んでも悲しみが湧いてこなくなったのです。人の死が、流れ作業のような感じになってきたのです。でも、後でわかったことですが、感情を殺していただけだったのです。他の職員の前では、悲しいからと泣くなんてことはできないのです。老人ホームは、お見送りが仕事の一つでもありますからね。障害者施設でも亡くなる方がおりまして、20歳そこそこで風邪から多臓器不全で亡くなった方もおりました。医師も看護師も患者が死んでも涙を流す事なく仕事をしているようですが、私は感情を殺してまで仕事をしたいとは思わなかった。自分の気持ちに素直に生きて行きたいと思いました。愛する人が死んだら悲しいです。愛する人が死んだら悲しいから、人は人を殺してはいけないのです。命だからとか言っても子供はわからない。私が介護の仕事をしていた時にお見送りをした方の名前を今でも覚えております。クリニックで仕事をしていた時にお見送りをした方の名前と病名もいまだに忘れないで覚えているのです。食道癌だった渡辺Hさん、心不全だった藤井Mさん、肝臓がんだった大山Sさん、私のような人間は医療関係や福祉関係の仕事は、ダメなのでしょうね。忘れる事ができないのです。けっこう辛いですよ。