熟年の生徒さんについて。結城美帆子

当教室では、現在、3歳のお子様から84歳の後期高齢者の方まで、それぞれの目的・目標をお持ちになりレッスンにお越し頂いております。その中には、障害をお持ちの方もおります。3歳からレッスンを始めるお子様と、60歳を過ぎてからレッスンを始める熟年の方とでは、指導方法も目指すところも異なります。

私の指導理念として「老若男女問わず、健常者も障害者も問わず、すべての人に、ピアノを弾けるようにしたい。そして、ピアノの楽しさと、ピアノが弾ける喜びを味わって頂きたい。」と思って日々、指導をさせて頂いておりますが、どのように弾けることが、弾けると言うことなのかは、それぞれです。

3歳から始めた子供と20歳を過ぎてから始めた大人が、同じレベルまで弾けるようになるのは、努力次第で不可能ではないかも知れませんが、非常に難しいと思います。

たとえば、音楽の才能の一つであります絶対音感は、ある時期を過ぎますと、脳により相対音感のなってしまいますので、相対音感は、何歳からレッスンを始めても身につく可能性は有りますが、絶対音感は2歳3歳から始めないと身につけることは絶対に無理なのです。同様に、ピアノの演奏も、巧みな演奏技術を身につけられる時期も10歳前後から20歳前後と限られております。

巧みな演奏技術を望むのでなければ、ピアノは何歳から習い始めても弾けるようになります。どれだけ演奏技術を高められるかは、生徒さんの能力や、生徒さんの欲望次第です。生徒さんが、どこまでどのレベルで「弾けた」と感じ満足できるかです。両手で弾けるようになっただけで満足される生徒さんもいらっしゃれば、両手で弾けるだけでは満足されない生徒さんもいらっしゃいます。「ピアノが弾ける」と言う定義と言いますか、概念のようなものが違うのでしょうね。

私は、基本的に、生徒さんが満足できるところで「良し」としております。熟年になってピアノのレッスンを始めると、両手で同じ音を弾くことも大変なようです。右利きの方が左手を右手と同じに動かすことは、大変なことなのです。ですから、両手で同じ音を弾けるようになると言うのは、素晴らしい進歩なのです。

指導者として大切なことは、生徒さんがどのレベルを「うまく弾けるようになった」と実感しているのかを見極めることです。生徒さんがどのレベルを望んでいるかを見極めることです。生徒さんが何を目的にピアノのレッスンにお越しになっているかを見極めることです。生徒さんがご自身が、「うまく弾けた」と思えることが大切です。できるようになったことを褒めることです。諦めないことです。けしてネガティヴにならないことです。人間は、必ず、いつか死にますが、いつ死ぬかわからないから生きていられるのではないでしょうか。「無知の知」ですね。