岡部クリニック院長の岡部正先生が主宰されているオリーバメディカルクラブ食事会の今回のテーマは「出汁で本当にやせられるか?」でした。
「太っている人は、第六の味覚『脂肪味』が感じられない」
昨年10月、世界に先駆け九州大学の研究グループが、脂肪味のメカニズムを解明しました。
舌の味蕾(みらい)細胞の中に、脂肪に反応して脳に味を伝える「神経」を発見したのです。
脂肪味は、甘味・酸味・塩味・苦味・うま味に続く「第6の味覚として注目されています。
大昔の人類にとって、動物の脂肪は貴重な栄養素でした。
それをキャッチするために脂肪味を感じるようになったというのです。
ところが、オーストラリア、ディーキン大学の研究により、脂肪味の感じ方には個人差があることがわかってきました。
さらに脂肪味に鈍感な人ほど、肥満や生活習慣病のリスクが高くなると指摘されています。
脂肪を多く含む食べ物を好んで食べているとこの脂肪味を感じにくくなるというのです。
脂肪味に敏感な人は、高脂肪食を少量で満足できるのですが、脂肪味に鈍感になると、満足がなかなか得られません。
「脂肪味は中毒になりやすい」
また高脂肪食は、脳の報酬システムを活性化させる味覚で、アルコールとタバコと同様に依存性が高く中毒になりやすい味覚です。
脳も快感物質ドーパミンをつくり食欲が増進するため、濃厚な味を好む味覚からなかなか逃れられません。
病院に禁煙外来、禁酒外来があるように、脂肪味中毒も意志の力でやめることが難しいのです。
「脂肪の代わりに出汁のうま味を利用する」
出汁のうま味は、脂肪のように脳を満足させる働きがあります。
この作用を利用したのが「出汁ダイエット」。
舌の味を感じる細胞は、2週間くらいで生まれ変わります。
この間、脂っこいものと甘いものを極力控えてうま味を積極的に摂ることで、舌は本来の味覚を取り戻します。
薄味でも満足できる味覚を取り戻せば、ヘルシーな食材でも美味しいと脳が感じるため、食事の満足度が高まります。
誤った脳の学習を正していくことで、食欲も落ち着いてきます。
「うま味は満腹感の持続時間をのばす」
うま味成分のグルタミン酸やイノシン酸を含む食事をすると、含まない食事に比べて満足感が維持するという報告があります。
またある実験では、グルタミン酸を添加したコンソメスープを飲んだグループは、グルタミン酸を含まないグループに比べて、その後のケーキなどのデザートを自由に選択させても、その量は大幅に減るという報告もあります。
特に、肉や魚、大豆、卵などのたんぱく資源を主体としたスープにうま味物質グルタミン酸を加えると、より満腹感が増強するとのことです。
「うま味でストレスコントロール」
やけ食い、やけ酒という言葉があるように、やはり、ストレスは食欲に直結します。
食べたり飲んだりすると一瞬だけ気分が高揚して、ストレスが解消したような気持ちになります。
ところが直後には、血糖値の乱高下によって気分が不安定になったり、暴飲暴食による後悔など、ネガティヴな感情に支配されてしまいがちです。
うま味には精神の安定を促す作用があります。
とくにかつおだしには、緊張感や不安を和らげるという報告があり、精神的なストレスを軽減する効果が期待できます。
これからはコーヒーブレイクならぬ「出汁ブレイク」も大いに楽しみましょう。
味覚は、お母さんのお腹の中にいるときから発達します。
羊水の中にはうま味物質のグルタミン酸が含まれており、母乳にも同じようにグルタミン酸が豊富に含まれています。
赤ちゃんはうま味を感じ取って、満足するまでミルクを飲みます。
これが食事・食欲の原点です。
強い脂肪味は、こってりした味付け、ハンバーグやソーセージ、スナック菓子、砂糖と脂肪が合わさったお菓子などは、うま味よりもはるかに強く脳を刺激して中毒になり、脳が「アンコール」を繰り返し、やみつきになり肥満になっていきます。
いつからか、うま味だけの味では満足しなくなっていくのです。
脂肪を大量に摂取して満足感を得てきた欧米の脂肪文化圏に対して、アジアでは穀物や大豆、魚を発酵させて醸造した、だしや醤油の風味で満足感を得てきた歴史があります。
明治以前の日本は、動物性油脂はほとんど摂取しなかった代わりに、だしによるうま味文化がより発展したと考えられます。
今一度、だしや素材のうま味を再考し、おいしくかつ健康も守る和食の素晴らしさを次世代へ伝承しましょう!
そのためにはたったの2週間、脂肪と砂糖を控え、うま味で舌をリセットするだけです!
岡部クリニック 事務長で管理栄養士の山下香恵さんの文章をそのまま書き写させていただきました。
健康で長生きするためには、管理栄養士さんの存在は大切と思います。
私は、山下さんからたくさん学ばせていただいております。
もし、オリーバメディカルクラブのお食事会に参加してみたいという方がおりましたら、お誘い申し上げますので、私にお声をお掛けくださいませ。
毎回テーマがあって美味しくいただきながらお勉強にもなります。