伝えることの難しさ

小学6年生女の子のピアノのレッスンでのこと。

渡部由記子先生のレッスンで「ここは、ためて」と言われた箇所がありました。

生徒さんに「ためて」ってどういうことかわかる?と聞きましたら、

生徒さんは「間をあける」とお答えになりました。

「ためて弾く」ということは、「深い呼吸をして」と言うことなので、手本を弾いて聞かせての指導もあったのですが、生徒さんには、呼吸云々ではなく、間があいていることだけにしか意識が向かなかったということなのでしょうね。

これでは、生徒さん本人は、先生に教えられた通りに弾いているのに、なぜ違うと言われるのかわからないですよね。

トリルの箇所を「ふるえる」と言われたのですが、「細かい振動のように」との意味でおっしゃったのですが、生徒さんは、寒くてブルブルというかガタガタ震えると思ったようでした。

なぜ、生徒さんの思っていることがわかったかと言いますと、精神分析の技法を使って、自由連想をさせたからです。

精神分析は、患者は精神分析家に転移をし、精神分析家は、患者に逆転移を起こします。

精神分析は、お互いの転移で分析の作業が進んで行きます。

精神分析家は、心をニュートラルな状態を保つ必要があります。

その為には、自分自身が自ら分析を受けて自分の問題を処理しておくことが重要みたいで、教育分析とも言われますが、私は10年以上受けました。

精神分析家は、逆転移をたえず分析します。

相手に起こす逆転移で自分を理解し、相手を想うのです。

小学6年生のこの生徒さんが不足していることは、「先生がこう言ったから言われた通りに弾いているのに」ということで、自分の音楽を考えていないということです。

主体的な演奏ができていないのです。

作曲家の心を考えて弾くことができれば、先生が言った「ためる」とか「ふるえる」の意味を考えて弾くことができるようになると思います。

言葉の意味を考えず、そのまま受け取ってしまうところに原因があるのではないかと思います。

意味を考えられるようになったら、そして主体的に演奏ができるようになったら、聴衆に感動を与えられる素敵なピアノ演奏ができ、コンペティションで地区予選を通過することもできると思います。

ピアノを演奏する上で1番大切なことは、先生に言われたことを忠実に守るのではなく、まずは、作曲家の心に耳を傾け、作曲家の想いを考えて演奏することです。

指導者は、心を教えることはできないのです。

指導者は、このような音を出す為には、こうすると良いというようなテクニックしか教えることはできないのです。

だから、コンペティションで上を目指す人には、「真似をして、先生と同じ音を出して」と、言われるのです。