ピアノの教則本の選び方。結城美帆子

私がピアノを習い始めた頃は、導入期の教則本と言えば、ドイツから輸入したバイエルか、安川加寿子先生がフランスから輸入されたメトードローズの二つでした。

私より少し上の世代の人たちはバイエルしかなかったのではないかと思います。

私は、バイエルから習いました。

ピアノを教え始めた時は、3歳の小さな子ども〜大人まで、みんなバイエルを使って教えておりました。

全ての生徒さんがバイエルをスムーズに弾けたわけではありませんでしたが、昔の私は、出来ないのは生徒さんの能力の問題だろうと考えておりましたので、練習をしてこないで上手く弾けるようにならない生徒さんがいても気にすることはありませんでしたし、上手く弾けるようにならないからと途中で辞める生徒さんがいても気にしませんでした。

教え始めて10年くらい経った時、生徒さんの能力に問題があるのではなく、上手く弾けるようになる生徒さんと、上手く弾けるようにならない生徒さんがいるのは、生徒さんの能力はみんな同じと考えて、みんな同じにレッスンをしていたからではないかと言うことに気がつきました。

そこで、教則本の研究をはじめたり、発達心理学や心理学を学び直しました。

それでも、上手く弾けるようにならない生徒さんがいたので、哲学と精神分析を学びました。

私がピアノを習い始めた頃は、今のように誰でもピアノを習う時代ではなかったですし、私がピアノを教え始めた時も、まだ誰でもピアノを習う時代ではなかったように思います。

だんだんに、誰でもピアノを習う時代になり、その結果、色々な生徒さんが習いにくるようになったと思いますから、当然、生徒さんの能力も様々になってきたのではないかと思います。

教え始めた頃は、非常に無知でしたから、自分が弾けるようになったピアノは、誰でも弾けるようになると思っておりました。

ところが、教え始めて、なんでこんなに弾けないのだろう?なんでこんなに音符が読めるようにならない生徒さんがいるのだろう?と、パニックになって、母に「私、ピアノを教えるのはできない、無理、辞める」と、言ったことがありました。

その時、母に「人間は十人十色、色々な人がいる。色々な人がいるのが社会なの」と、言われました。

これが大きなきっかけとなって、人間を勉強しなくてはピアノを教えることは出来ないと思い、心理学や哲学・精神分析を学ぶようになりました。

本当は医学も学びたかったのですが、私は理数系が苦手だったので、看護婦さんでも人間の生理学は多少学べるのではないかと思い准看の学校へ通ったのです。

そんなこんなで、今はどんな生徒さんでも教えることができるようになりました。

導入期の教則本が次から次へと出てきますが、よくよく見ると、どれも同じように思います。

数ある導入期の教則本の中で、導入期から音楽的表現力が学べるのは、導入期からペダルが出てくるバステインピアノ教則本です。

バステインは、導入期からセオリーの教本もあるので、指導者としては使いやすいのですが、導入期から3、4冊の教則本を使う為、レッスン時間が30分の方や、お家での練習時間が短い方、自閉症のお子様は理解が難しいように思いますので、生徒さんの状態を見させて頂き、生徒さんが無理をせず弾けるようになる教則本を選んでレッスンをしております。